MB13が摂取したもの

読んだもの、見たもの、食べたものなど、外から取り入れたもの全般についての感想を書いておくチラシの裏

ドン・キホーテ前編(一)

ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)
セルバンテス Cervantes

岩波書店 2001-01-16
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厄介なことが片付いたので、長編でも読もうと手にとった。神保町にて購入。前後編六冊セットで2,500円。なかなかのコストパフォーマンス。
ほらふき男爵系の「昔は面白かったのかもしれないが、今読んでもイマイチ」な本かとおもいきや、ところがどっこい、とても面白い。久しぶりに出会った、移動中の時間があっという間にすぎてしまうように感じられる本。

有名なので解説など要らないだろうが、メモがわりに一応書いておく。
1603年にスペインでセルバンテスの書いた本。レコンキスタは終わっているが、アル・シッドも引用されるしモーロ人(ムーア人)も出てくるなど、若干その余韻を感じさせる。ドン・キホーテという騎士が実際に存在したものとして、それをアラブ人の歴史家、シデ・ハメーテ・ベネンヘーリがアラビヤ語の歴史書として記し、さらにそれをセルバンテスが翻訳したものという形式をとっていて、とてもメタな作品。それに伴って、章の構成なども既存の騎士道物語本(特に、作品中に何度も登場する『アマディス・デ・ガウラ』)を意識したものとなっているようだ。別に必須ではないが、アーサー王系の騎士道物語やヨーロッパ文化には一応の知識がある方が楽しめるのではないかと思われる。

前編で四部の構成が、岩波の文庫本だと三冊。第一巻は一部から三部の途中まで。
有名な、風車に突っ込むシーンは実は第一部の最後であり、つまり本で言うと六冊セットのうち第一冊目の序盤である。「ドン・キホーテ→オチは風車」という、どこで刷り込まれたのか分からない、いい加減な知識をこの歳まで持ち続けていたことを恥ずかしく思った。

(これまた、どこで刷り込まれたのか分からない、いい加減な知識によれば)セルバンテスはこの本で騎士道物語を批判したということだったような気がするのだが、本当にそうなのだろうか?読んでいると、どうもそのような気はしない。確かにドン・キホーテの頭は完全に狂っているが、彼は素直で優しくて人好きのする性格だし、努力家で、教養もある。郷士として大人しく暮らしいていた時期には、地元の人々から大きな尊敬を得ていたようだし、「キチガイ」の一言でバッサリと切って捨てられるようなタチの人間ではないと思う。

まぁ、このあたりのことは続きも読んでいく内に明らかになってくるのかも知れない。今第二巻を読み始めたところだが、まだまだ先が楽しみ。