MB13が摂取したもの

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『コミック昭和史』1~8巻 水木しげる

 水木しげるが昭和をどのように捉えたか、という半分ほど自伝的な内容の本。
 彼は大正11年の生まれであり、すなわち63年の昭和を丸々体験した人物である。したがって彼にとって昭和とは、青春であり、人生そのものであると言える。そんな彼の人生そのものである昭和を大きく象徴するものが、やはり<戦争>である。あとがきにこうある。

 「太平洋戦争」は、昭和史の中では短い期間かも知れないが、ぼくにとっては”十倍”に感じた。あの戦争のショックは大きかった。
 従って、戦争を冷静にみられるようになったのは、平成になってからだった。”戦中派”というのは、命がけでやった体験が、平和時にはなにひとつも役に立たない感じで、一番損をした世代だろう。

というところからも分かるように、本書の内容の多くは太平洋戦争にまつわる事柄である。

 1~4巻までの日本に関する記述は、当時は水木しげるがまだ幼かったということもあるのだろうが、やや教科書的な記述にとどまっているきらいがある。『のんのんばあとオレ』を読んでいると、自伝部分の内容はこちらよりも薄いので、やや退屈かもしれない。
 しかし、5巻以降になって彼が成長し、おそらく彼の記憶がしっかりしている時代になってくると、自伝部分の面白さもぐっと増してくる。戦争の部分に関しては『総員玉砕せよ!』の方がまとまっているが、こちらにはない内容も記載されている。
 また、7巻以降の戦後史部分に関しては、特に彼が漫画家となって以来忙しすぎたのか、彼の生活と「昭和史」とがあまり密接に絡んでおらず、歴史部分がやや浮いている印象も受けた。とはいえ、やたらに貸本漫画を強調していた『ゲゲゲの女房』に比べて紙芝居屋→貸本漫画家→週刊誌の流れが色々と記されており、白土三平つげ義春も登場するなど、興味深い内容にはなっていた。