鳩の頸飾り イブン・ハズム著 黒田壽郎訳
鳩の頸飾り―愛と愛する人々に関する論攷 (1978年) (イスラーム古典叢書)
イブン・ハズム 黒田 寿郎
イブン・ハズムというコルドバ生まれのイスラーム神学者が愛について書いたもの。しかし「愛について」というよりは「恋について」書いたものと言ったほうがしっくり来る。神保町で安く売っていたので、ついつい購入。イスラーム世界では古典的な恋愛論。全361ページ。30章構成。
以下は第一章から気になった部分のメモ。あくまでメモなので本文の構成とは多少異なっているが、基本的に彼の主張からは外れていない。また、第二章以降は具体的なシチュエーションに対してイスラーム的な視点からの解釈が下されているので、興味があったらそちらを参照していただきたい。
- 序章
この本の構成を説明。
- 第1章 愛の本質について
愛の本質は魂の合一を求めることである。
もしも愛の原因が肉体的な美しさにあるとすれば
⇒美人でない人までが結婚しているのは説明がつかない。
もしも愛の原因が性格の一致にあるとするならば
⇒同じ意志を持たず、意見を異にする者を愛したりはしない。
ゆえに愛は魂そのものの中にある。*1
鉄と磁石が引き合うように、魂は、類似の性質を持った物同士が引き合う。すなわち、魂の本来の棲家である上部の世界において魂の力がたがいに類似し、その組成が酷似している者同士は、お互いに惹かれあう。これぞ真の愛。
この事は、たがいに愛し合う二人の間には、必ず類似性や本性的な協調が存在するという事実からも明らか。(?)
それではなぜ片思いが存在するのか。魂がお互いに引き合うのなら、常に両思いの状態でなければおかしい。
⇒それは、愛し返さぬ方の魂が現世的な性質の覆いに取り囲まれ、それが魂の片割れを探す事の邪魔をしているから。
しかし、愛は一般的に美しい形姿を求めるものだ。それはなぜか。
⇒魂はそれ自体美しいため*2、あらゆる美的なものを好み、均整のとれた姿に惹かれる。そのとき、背後に自分と何らかの共通性を見つけると魂が結合し、真の愛が芽生えるが、共通性が見出せない場合は肉体的な欲望に留まってしまう。しかしとにかく肉体的な形姿は、散り散りになった多くの魂を招きよせる不思議な力を備えている。