MB13が摂取したもの

読んだもの、見たもの、食べたものなど、外から取り入れたもの全般についての感想を書いておくチラシの裏

 ベルリン・天使の詩 ヴィム・ヴェンダース

ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]

ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]


ベルリンの街を傍観する天使たち。彼らは(本来的な意味で)霊であり、どこにでも存在しているが、どこにも存在しない。人々にわずかな希望を与える事はできても、世界に大きく干渉してゆくほどの力はない。それゆえ、ただ歴史を傍観し、記録するだけの存在だ。主人公(ダミエル)はそうして長い間人間界を見つめてきた結果「生きる」という事に興味を持ち始める。天使として終わりのない命を無為に過ごすよりは、たとえ限られた命でも主体的に生きてみたい。そしてダミエルは人間界へ降りることを決心する。

コロンボが出て来た!しかもすげーいい役だし、役柄的にもぴったり!人の思っていることが聞こえてくるのは面白かった。ドイツ語が分からないから直接理解できないのが残念。
DVDパッケージには「恋の為なら死んでもいい!」って感じの解説が書いてあるけれども、これは単純化しすぎでしょう。天使という存在は実体を持たないので*1、人間のように肉体が死を迎える事はないが、感覚もなく*2、自然や人間に対してアクティブに働きかけることもできない。これは永遠に死んでいるのと変わらないわけで、人間界に降りるという主人公の選択は「永遠の死」よりも「限りある生」を選んだのだという点を強調すべき。そういう意味では目前に突き付けられた死から、短いながらも充実した生き方を模索した「生きる」(黒澤明)の主人公と、今回の天使は(原因が強制的か自発的かという違いはあるにせよ)似ているといえる。

*1:このへん日本人にはイメージしづらいが、旧約聖書を共有する全ての宗教で共通の認識

*2:厳密に言えば、天使の時から既に見たり聞いたりしているのだが、色を認識できないという設定などでその辺頑張っている