『クオ・ワディス』(上)(中)(下) シェンキェーヴィチ
A・マクグラスの『キリスト教神学入門』はちょっと休憩し、ローマ時代のキリスト教徒たちを題材とした小説を読んだ。
- 作者: シェンキェーヴィチ,Henryk Sienkiewicz,木村彰一
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Amazonなどの説明によると、『クオ・ワディス』は19世紀末ごろ、諸帝国によって圧政を受けていたポーランド民衆が受けていた苦しみを、ネロ帝末期に迫害されていたキリスト教徒に重ねた小説であるとされている。
しかし、読んでみたところ、物語中では(もちろん監視をくぐり抜ける目的もあっただろうが)そこまで露骨に政治的なメッセージが表明されているわけではなく、物語単体として十分に完成されたものであり、あまりこのような背景を強調するのも適切ではないように感じた。
そこで、自分の知識をより確かにする目的も込めて、背景などを色々確認していきたいと思う。
シェンキェーヴィチ
1846年5月5日、シェンキェーヴィチは当時ロシアの支配下にあったポーランド立憲王国の貧しい貴族の家庭に生まれた。父親はリプカ・タタールというリトアニアに定住していたムスリムたちに起源を持ち、ドイツ・ヤウホ家の血統に連なるものでもあったため、貧しいとはいえ由緒ある家柄であった。彼の生まれたWola Okrzejskaは母方の祖母の所有する土地で、曾祖母の設立した教会で洗礼を受け、彼はキリスト教徒となった。
彼は中等学校をそこそこの成績で卒業したが、人文学にかけては良い評価を受けていた。大学では、両親の希望からワルシャワ大学医学部の試験をパスしたが、その後医学部を諦め法学部に転部した。そして最終的には文献学、史学に移行し、これを徹底的に学んだ。
ロシア帝国による支配
ニコライ一世はデカブリスト反乱の鎮圧からその治世をスタートさせた人物であり、反動的な政策をとってきた事で有名である。1830年に始まったポーランドの十一月蜂起ではニコライ一世の廃位を宣言したが、ニコライの差し向けた軍隊によって鎮圧され、1832年にはロシア帝国に編入される事になっていた。(途中ですが、続きは明日)