『キリスト教神学入門』 A・E・マクグラス 第一部第二章
- 作者: アリスター・E.マクグラス,Alister E. McGrath,神代真砂実
- 出版社/メーカー: 教文館
- 発売日: 2002/02
- メディア: 単行本
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高校生でも読み終えた本ということで、たしかに分かりやすいのだが、知らない情報が詰まっている濃い本なのでなかなか頭に入れるのに時間がかかる…(言い訳)
第二章 中世とルネサンス
第二章(58~94頁)は、中世からルネサンスと呼ばれた時期の、キリスト教神学の発展についてである。
中世のスコラ哲学から、ルネサンスを経て宗教改革に繋がる神学的発展がどのように為されてきたのか。また、それは何故なのかというのをざっと概観している。中でも驚いたのは、ルネサンスと、それを代表すると思われる人文主義が、必ずしもルネサンスの世俗的哲学を推し進めたわけではないという主張を(最近の研究で明らかになっているということで)マクグラスが熱心にしていることである。人文主義者は雄弁を第一の目標として、古典にあたることをその手段として採用したのであり、彼らの間にはこれといって統一された主張もなく、また、プラトンやアリストテレスなど特定の思想に基づいて、それをその時代に活用すべく古典を読みだしたというわけではないというのだ。
つまり
このふたつの考え方には欠陥があるというのである。第一に、古典文学の研究は書き言葉の雄弁の手本としてであって、人文主義者の著作には、古典の学問や原語を主題とするものよりも、書き言葉・話し言葉の雄弁の向上を目的とするものの方がはるかに多い。第二に、人文主義の主な関心は文芸(雄弁)に向けられていたのであって、哲学に打ち込んでいる著作はほとんどなく、あっても素人くさい。そして、それらもかなり多様であり、啓蒙主義の合理主義を予見するという、ステレオタイプな人文主義理解とは相反する魔術や迷信の世界にのめり込む人文主義者も居たのである。
第二章の問題と(自分の)解答
- この時代に、ほとんどの西方の神学者によって用いられた原語は何か。
ラテン語。キリスト教神学も「ヴルガータ」というラテン語訳聖書に拠っていたが、人文主義によりギリシャ語聖書が発行されるようになると、その翻訳に間違いが含まれていたことが明らかとなり、問題となった。 - 「人文主義者は、古代ローマの研究に興味のあった人々である」。この定義は、どれくらい役に立つであろうか。
あまり正しくない。人文主義者の興味の対象は自己の雄弁さの向上であり、古代ローマ及びギリシャ語の研究はその為の手段でしかなかった。このことは、人文主義者の著した書物のうち多くが話し方、書き方についてのものであり、哲学についてはそれほど書物が書かれなかったということからも明らかである。 - スコラ主義神学の主要な主題は何か。
信仰の合理的正当化と体系的提示。信仰は理性に先立つが、それにも関わらず信仰の内容は合理的であるという主張がなされた。このような中で哲学の役割は非常に重視され、哲学によりキリスト教神学の合理性が証明され、また、信仰箇条を体系的に探究、理解されうると考えられた。 - 中世においてサクラメントの神学に大きな興味が持たれたのは、なぜか。
中世において神学が発展を果たすにつれ、社会の中で教会の果たす役割が増大したので、サクラメントについて整理する必要性が生じたから。 - 「原典に帰れ」という標語は、何を意味するか。
キリスト教神学にしろ、法律にしろ、それまでの学問は中世の学者が加えた欄外注を元に研究を行なっていたが、そのような文献を通して学ぶのではなく、原典となる書物の原語を学び、それを直接読むようにするということ