MB13が摂取したもの

読んだもの、見たもの、食べたものなど、外から取り入れたもの全般についての感想を書いておくチラシの裏

雪は降りますか

未だに思い出しては腹が立つ話です。

数年前、キルギスで優秀な学生と会いました。
彼女はキルギスで一番の大学に進学して物理の研究(細かいテーマは聞かなかった)をしながら、日本センターという、海外で日本文化の発信をしたり日本語教育をしたりするところに通って日本語を一生懸命勉強していました。彼女は日本語がとても上手だったのと、見た目が日本人と変わらなかったので、何も知らなければ日本人だと思って敢えて疑わない、という程でした。

さて、そんな彼女は、実は日本の奨学金をもらって日本の大学に留学することが決定していました。
留学先は東北のとある大学にしたんだそうです。それを聞いた僕は「なるほど、やはり涼しいところの方がいいんですね」と言いましたが、どうやらそうではないらしい。

キルギスというのは山がちの国で、夏には旧共産圏から色々な人が避暑やハイキングのためにやってくるという、寒い国なのです。だから彼女は、むしろ日本への留学にあたって、温かいところに行きたいと考えた。そこで彼女は、留学先の候補となっている大学の先生にこう質問したそうです。

「そちらでは雪が降りますか」

すると沖縄の大学の先生からは「降ります」と返信がありましたが、
東北の大学の先生からは「降りません」と返信がありました。

なので、雪の降らない東北の大学を選んだ、というのです。

逆ではありあませんか?と聞いたのですが、逆ではないらしい。
確かに、その大学は太平洋側だったので日本海側に比べれば雪降らないのですが、やはり東北ですから雪は降ります。一方、沖縄で雪など降るのでしょうか。振っても数年に一度というものではないのでしょうか。

私は思わず「その場所は……雪は……降りますよ」と言ってしまいましたが、もう留学先は決まってしまっていて今更変えられないとのことだったので、あまりきちんと説明するのも悲しみを深くするばかりに思え、それ以上言うのはやめました。

それにしても、一体なぜあんなことが起こったのでしょうか。
彼女の勘違いとして済ませればそれまでのことですが、とても日本語が上手な学生でしたし、話をしていても頭がいいという印象を受けていたので、そんな簡単な間違いをするとは思えませんでした。だとすれば、いったい受け入れ側の先生たちは、なぜそんなウソをついたのでしょうか。

一つには、質問をされた二人とも質問の意図は完全に理解していたが、沖縄の先生はその学生を受けれ入れたくないと思ったから嘘をつき、東北の先生は受け入れたいと思ったから嘘をついたという可能性があるでしょう。最近は留学生を受け入れたほうが国から補助金が貰えるので各大学はどんどん留学生を受け入れていますが、まあ、何かしらの理由から沖縄の先生は受けれ入れたくないと考えた、というのもあり得ることです。

もうひとつは、二人共彼女を受け入れたいと思っていたのですが、質問の意図をきちんと理解できたのは東北の先生だけだった、という可能性です。
実のところ、雪に対するイメージは住んでいる地域ごとに全く異なります。僕も含め、あまり雪の降らない地域の住民にとって雪とは珍しい、振ったらどことなく楽しいものですが、冬の雪に悩まされている側からすると、寒さの象徴であり、また面倒な冬が始まるのだと、うんざりさせられる物らしいのです。

だから、雪の降らない沖縄に住む先生は最初の僕と同じように「たまには雪でも降らないと寂しいのかな」と思って「雪が降る」と嘘を付き
雪に悩まされている東北の先生は「雪なんてうんざりだよな」と思って「降らない」と嘘を付いたという可能性もあるかもしれません。



それにしても、本当に理解できない。
「あまり降らない」とか「降ることもあります」程度ならば、話としてわかりますよ。でもなんで真逆のことを断言したんでしょう。
あー腹が立つ。