『ソーネチカ』 リュドミラ・ウリツカヤ 新潮クレスト
読んだものいくつかスルーしてしまったが、戻って全部書こうとしたらウンザリしてまた書かなくなってしまうので、諦めることにする。
で、最近読んだソーネチカだけメモ。
若い頃から世界文学に慣れ親しんできたソーネチカが、自身に訪れる様々な出来事を、ただただ受け入れていくという話。
この作品の評価はソーネチカ(主人公)への評価そのものによってかなり変わりそう。プラスに評価すれば、彼女は文学作品などを通して得た超越的な価値観、つまり現世の細々とした損得に拘泥しないような価値観を持っており、世俗的な愛の次元を超えた神の愛の世界に生きているのだ、と言えると思う。しかし、見ようによっては文学オタクで容貌もぱっとせず自分に自信のない彼女が、文学作品という空想世界にのめり込むことで現実逃避を続け、厳しい現実と向かい合おうとしない消極的な話だとも言うことが出来る。
ウリツカヤはソーネチカの中でそのどちらの要素が強いのか、またそのどちらを正しいと思うのか、といった事ははっきりと言わない。おそらくはその両方が、それぞれ同程度正しいのであろう。そういう人間のはっきりとは割り切れない気持ち悪い感じを、どちらに肩入れするでもなく気持ち悪い感じのまま描き出したところに、ウリツカヤの才能があるのだと思った。
訳者である沼野先生はウリツカヤは現代のトルストイだと(別の作品に対してだけど)言っていたけれども、この点でキャラクターのはっきりとしているトルストイとは別の傾向であると思った。あとがきによればウリツカヤはプラトーノフをよく読んだらしい。それを読み、なるほど似たような気持ち悪さがあると納得した。